ハイコープ種豚の育種改良情報
雌系品種
雌系品種であるランドレース種や大ヨーク種にまず求められる能力は優れた繁殖性能です。しかし、産子数や離乳頭数といった能力は遺伝率が低く、小規模な育種集団では効率的な改良が困難です。
ハイコープ豚のランドレース種は、日本各地のGGP・GP農場で合計3,000頭を超える母豚が稼働しており、同一系統の純粋ランドレース種母豚集団としては国内最大規模です。この集団規模を利用して、「大規模閉鎖群育種」により多産母豚を選抜し、繁殖能力を改良してきました。2007年からは、繁殖能力の改良スピードをさらに高めるために、繁殖成績の卓越した別系統のランドレース種豚を国内外より取り入れる「開放型育種」を実施し、多産性と強健性、飼い易さを備えた「ゼンノーL」が誕生しました。
もうひとつの雌系品種である大ヨークシャー種「ゼンノーW」も、全国のGGP・GP農場で1,000頭以上の母豚が稼働しており、ランドレース種と同様に大規模閉鎖群育種と開放型育種(2009年~)を組み合わせた手法で繁殖能力などを改良しました。
これらのランドレース種と大ヨークシャー種から生まれた「ハイコープF1種豚」は、原種豚の改良を進めた結果、1母豚あたり年間26頭の肉豚出荷が可能な”多産系”F1雌種豚となりました。
全農グループでは、今後も繁殖能力だけでなく産肉能力や飼料効率などの形質の改良も進めると同時に、飼養管理体系や哺育技術といった周辺技術の研究開発もさらに進めます。
雄系種豚
豚肉の肉質に対するニーズは国や地域によって大きく異なります。特に日本国内で好まれる豚肉は良質で適度な量の脂肪が求められる点で世界でも特異なマーケットと言えます。
三元交雑肉豚の場合、肉質を決める遺伝的な要因の約50%は留め雄の能力で決まるため、この点で肉質に対する留め雄の役割は大きく、留め雄開発は国内ニーズに合致した豚肉の商品性を維持するうえで、非常に重要になっています。
なお、留め雄に求められる産肉能力や肉質といった能力は比較的遺伝率が高く、小さな育種群でも急速な改良が可能です。また、小さな育種群にすることで血縁関係が急速に高まるので、産肉能力や肉質の斉一性を高めるためにも有利です。
そこでハイコープ豚生産では、留め雄として肉質が良く発育が早いデュロック種を採用し、全農が独自に育種改良を実施してきました。
現在稼働しているゼンノーDは日増体重が1,000gをはるかに超える高い発育能力を有し、出荷日齢短縮による豚舎回転率向上に貢献します。また、長年に渡り、ロースの筋肉内脂肪割合に重点を置いた改良を実施しており、国内マーケットに適した肉豚生産に活躍しています。
このように、ハイコープ種豚では雌系種豚と雄系種豚についてそれぞれ明確な改良目標を設定し、最も適した手法を用いた遺伝的改良を行っています。ハイコープ種豚は、CM肉豚生産農場において繁殖能力、産肉能力および肉質の全ての面で最高の成績を発揮することを目標としています。